【論文】A01 榊茂好シニアリサーチリーダー論文がJ. Am. Chem. Soc.掲載されました


Theoretical Insight into Gate-Opening Adsorption Mechanism and Sigmoidal Adsorption Isotherm into Porous Coordination Polymer

J. Zheng, S. Kusaka, R. Matsuda, S. Kitagawa, and S. Sakaki

J. Am. Chem. Soc., 2018, 140, 13958-13969

DOI: 10.1021/jacs.8b09358

 

多孔性 配位高分子へのgate-opening吸着とサイン関数的吸着等温線の理論的解明

柔軟な構造を持つ配位高分子は、結晶性物質であるが、多孔性で、その空孔に気体分子を吸着する。多くの場合、吸着はラングミュア等温線に従って起きるが、構造が柔軟な場合、吸着に伴い構造変化が起こり、ラングミュア的でなく、サイン関数的な吸着等温線をしめす。この吸着等温線はラングミュア-フロインドリッヒ式に従うが、なぜ、構造変化をともなう気体分子吸着でラングミュア等温線でなく、ラングミュア-フロンドリッヒ式に従うのか、物理化学的に理解できていなかった。この研究では、鉄(II)錯体を骨格に含む柔軟な構造を持つ配位高分子への二酸化炭素の吸着を検討し、吸着サイトがI, II, IIIの3種類あること、吸着サイトIへの吸着はラングムイア等温線に従って進行すること、吸着サイトIIおよびIIIへの吸着は、空孔の歪みエネルギーが大きく〔すなわち、歪みにくいため〕、吸着が起こりにくい、しかし、9分子が同時に吸着するとその歪みエネルギーに打ち勝って吸着が進行すること、を理論計算から明らかにした。9分子の二酸化炭素が同時に吸着サイトIIとIIIに吸着する場合は吸着平衡式がで示される。なお、Kは吸着の平衡定数である。この結果、吸着等温線はサイン型になることを明らかにした。したがって、構造変化を伴うことがサイン関数型の吸着等温線の原因でなく、複数分子が同時吸着することが真の原因であることを明らかにした。これまで、構造変化を伴う吸着と吸着等温線との関係が明確になっていなかったが、本研究でその点を明らかにし、物理化学的な正しい理解を示した。