【論文】A01 榊茂好シニアリサーチリーダー論文がJ. Phys. Chem. C掲載されました


QM/MM Approach to Isomerization of Ruthenium(II) Sulfur Dioxide Complex in Crystal; Comparison with Solution and Gas Phases

Shinji Aono and Shigeyoshi Sakaki

J. Phys. Chem. C, 2018, 122, 20701-20716

DOI: 10.1021/acs.jpcc.8b04774

 

結晶中のルテニウム(II)二酸化イオウ錯体の異性化反応のQM/MM研究:溶液中および気相中との比較

分子性結晶内での化学反応は、結晶が柔軟で、化学反応の遷移状態を許容する場合に進行する。したがって、結晶内化学反応の理論研究は溶液内や気相中に比べて、結晶効果を取りこむ必要があることから困難である。その結果、結晶内での化学反応の詳細な理論研究はほとんど行われていない。ルテニウム(II)二酸化イオウ錯体は光励起により配位異性体を生成し、熱的に安定構造に緩和することから分子記憶素子のプロトタイプとして期待され、実験研究が行われている。我々は、周期境界条件QM/MM法を開発しているが、その方法をこの異性化反応に応用し、異性体の相対安定性は気相中と溶液中、結晶中で異なるが、溶液中と結晶中では良く似ている、しかし、活性障壁は溶液中と結晶中とで異なることを理論計算から明らかにした。理論計算から求められた活性障壁は実験結果と矛盾していない。結晶内化学反応の先駆的理論研究である。