Direct Observation of Photoexcited Electron Dynamics in Organic Solids Exhibiting Thermally Activated Delayed Fluorescence via Time-resolved Photoelectron Emission Microscopy
Yusuke Fukami, Masato Iwasawa, Masahiro Sasaki, Takuya Hosokai, Hajime Nakanotani, Chihaya Adachi, Keiki Fukumoto and Yoichi Yamada
Advanced Optical Materials, 2021
時間分解光電子顕微鏡による、TADF 分子固体の光励起された電子ダイナミクスの直接計測
有機 LED(OLED)は、次世代のディスプレー材料として期待されています。中でも、熱活性型遅延 蛍光(TADF)と呼ばれる特異な発光を示す分子材料は、軽元素のみからなり、発光量子効率 100%の 実現が可能であることから、次世代の OLED の中心を担う材料として大きく注目され、盛んに研究が 進められています。 TADF 材料の発光を支配するのは、励起状態の電子の動き(ダイナミクス)です。従来、電子のダイ ナミクスは、発光から間接的に推測されてきましたが、直接的な計測は困難でした。今回、改良した時 間分解光電子顕微鏡(TR-PEEM)を用いることで、構造がよく制御された TADF 材料の薄膜に対し て、TADF 発光過程の電子のダイナミクスを直接観察することが初めて可能になりました。これによ り、励起電子の生成から、発光による失活、また、濃度消光と呼ばれる特異な無輻射失活過程までの電 子の動きを捉えることに成功しました。また、観察の結果、励起電子により生成された励起子が自発的 に解離することで長寿命の電子が生成され、この電子が TADF の発光効率を低下させていることを突 き止めました。 本研究成果は、TADF 発光過程の本質を理解するための基礎的な知見となります。よく制御された 薄膜中での励起電子のダイナミクスを系統的に研究することで、高性能の TADF デバイスの開発が加 速されると期待されます。
[プレスリリース]
KEKウェブサイト
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